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心と身体に優しいインド舞踊

インド古典舞踊(モヒニアッタム)で、心も身体も元気に!

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インド通信に掲載!

RaginiDevi and Gopinath
インド通信にケララナタナムについて掲載されました。写真はGuruGopinathの貴重な写真です。

http://homepage3.nifty.com/~mariamma/india.htm(インド通信のホームページ)

こちらのホームページではすべてを読むことはできないので、この機会に会員になり定期購読をしませんか?
私の記事は以下の通りです。


「インド舞踊の新たなる表現、ケーララナタナムへの期待」

丸橋 広実

1995年以来、私は古典舞踊モヒニアッタムの踊り手になることを志し、ケーララに通いつめています。生来が好奇心旺盛なこともあって、世界最古のサンスクリット劇の一種で、女性が1人で演じるナンギャールクートゥというマイム劇にも挑戦。ケーララの伝統武術カラリパヤットで身体を鍛え、男性だけで演じられる歌舞伎のような舞踊劇カタカリにまで手を出して大忙し。すべてはモヒニアッタムのために、と理由をつけていましたが、本当のところは学びたい衝動が抑えられないのです。まさにケーララは芸能の宝庫なのです。
2009年、B.C.ヴァルマの小説で故牧野財士氏が翻訳した『チットラレッカー』をもとにしたインド舞踊劇を発表してからは、創作の面白さに夢中になり、2010年に『金色の果樹』、2011年には『女神の秘薬』と、インドの物語に着想を得て、舞踊劇を創作発表してきましたが、そろそろ原点に戻る必要があると感じて、昨冬、再びケーララへ。そして、出会ってしまったのです。ケーララナタナムという魅力的な踊りに。

ケーララナタナムは、1930年代、カタカリの偉大な指導者であるグル・ゴーピナートとその妻でモヒニアッタムダンサーのタンカマニが生み出した比較的新しい舞踊です。身体の動き、ジェスチャーによる物語表現と、顔の表情による感情表現に同等の重きがおかれています。舞踊が表現するテーマもヒンドゥー神話だけでなく、聖書や政治的問題まで、というところにはケーララの風土の特色が出ているようです。
ケーララの舞踊劇の代表格カタカリは、複数の男性によって演じられますが、ケーララナタナムは、女性が1人で何役もこなして物語を表現することを可能にしました。ケーララナタナムは、男性的で力強いカタカリのステップと、女性的で優雅なモヒニアッタムの動きの両方を使って物語を語ります。
ケーララナタナムの衣装やメイクは、かつては役柄に応じて選ばれていましたが、現在は、昔のケーララ王族の王女の装束を想わせるスタンダードの衣装があります。結いあげた髪のトップにはトゥルシーという薬草を飾ります。

創始者のグル・ゴーピナートは1908年、現在のケーララ州(1908年はトラヴァンコール藩王国で、州名はない)で長い歴史をもつカタカリ舞踊家一族に生まれ、13歳の時にカタカリの初舞台を踏み、その後も多くの偉大な指導者のもとで厳しい訓練を受け有名な舞踊家となりました。1932年に彼の才能に惚れこんだアメリカ人舞踊家ラーギニ・デーヴィー(ケーララ・カラマンダラム芸術学校における初の外国人生徒であり、偉大な舞踊家インドラニ・レーマンの母)に当時のボンベイに招待され新しい舞踊の創作に取り組み、インド国内やヨーロッパで公演を行いました。その後、ケーララに戻り、モヒニアッタムの舞踊家タンカマニと結婚し、夫婦共に古典舞踊の伝統の枠を広げ、カタカリの新しい訓練法を考案、カタカリのダイナミックなスタップと表現、モヒニアッタムの優雅な動きをとりいれケーララナタナムを生み出して、国内外で上演し、高い評価を得ました。
1930年代初め、グル・ゴーピナートのパフォーマンスを見たラビンドラナート・タゴールは彼を「真の芸術家」と絶賛し、ケーララナタナムがインド芸術における舞踊の地位復興への道の灯となるであろうと評価しました。
インド国立芸術院より現役芸術家に対する国家最高位の表彰を受けるなど、多数の栄誉ある賞を受賞、また、タゴール大学より文学博士号を授与されています。
グル・ゴーピナートは1987年10月9日、振付家としての遺作『ラーマーヤナ』舞踊劇の上演中に、衣装を着けたまま舞台の上で亡くなりました。ステージで人生の終焉を迎えるという念願の通りであったそうです。
彼の死後、ケーララナタナムはどのように受け継がれてきたのでしょうか。ケーララ州は、学生のダンス・コンクールが盛んです。モヒニアッタムだけでなく、バラタナティアムやクチプディ、カタカリなど、全ての種目の総合得点が高いほど、就職や結婚が有利になると言われ、人生がかかった真剣勝負なのです。コンクールに勝つためにと、親も子の舞踊教育に金に糸目をつけません。その結果、踊りの芸術性や精神性が置き去りにされるだけでなく、様々なスキャンダルも起こります。
ケーララナタナムもコンクールの種目に含まれていますが、逆に言えば残念なことに、コンクール以外の場でケーララナタナムを見る機会のほうが稀です。
ケーララ州政府も、ケーララナタナムの保護に乗り出しました。トリヴァンドラムの郊外にグル・ゴーピナートの名前を冠した舞踊学校を設立。コンクールで競うだけではなく、グル・ゴーピナートが遺したものを正しく受け継いでいくことが学校の目的です。自然豊かな広い敷地の中庭には円形劇場があり、たくさんの稽古場が点在しています。2013年には博物館や寮が完成予定です。ケーララナタナムが本来の姿を取り戻し、インドの代表的な踊りのひとつとして、その名が再び世界中に広まる日は遠くないと信じています。 

私が師事するゴーパンGopan師は、幼少の頃からグル・ゴーピナートに学び、現在は、ケーララ・カラマンダラム芸術学校でカタカリを教授するかたわら、ケーララナタナムの普及に尽力しています。ケーララに滞在中の私にも朝から晩まで、容赦なく厳しく教えてくださり、私は初舞台を踏むことができました。
私のケーララナタナム初舞台の演目は、クリシュナ神のルクミニー略奪の物語でした。ヴィダルバ国王の娘ルクミニーは、クリシュナ神の噂を聞いて、彼こそ自分の夫にふさわしいと考える。一方のクリシュナ神も美しいルクミニーを妻にしたいと考えた。しかし、ルクミニーの長兄ルクミンは、クリシュナ神を嫌い、他国の王との政略結婚を企む。ルクミンの暴走に困惑する父王、クリシュナ神に恋焦がれ、兄の決めた政略結婚を嘆くヒロインのルクミニー。悲嘆にくれるルクミニーを慰め、クリシュナ神を説得に行くバラモン、そして颯爽と馬車を走らせ、結婚式からルクミニーを奪うクリシュナ神と5役を1人で演じます。
こうしたいきさつを経て、本年9月8日、座高円寺にて「神々の楽園」と題し、ケーララナタナムを日本初公開させていただくことになりました。日本の皆様に、ケーララナタナムの魅力にぜひ触れていただきたいと願っています。

まるはし ひろみ:インド舞踊家(モヒニアッタム)
「心と身体に優しいインド舞踊教室」主催
ケーララ州に2001年文化庁芸術在外派遣員として渡印。http://www.mohini-jp.info/

9月8日(土)18時半開演「神々の楽園」@座高円寺 

ケララ企画まで keralakikaku@gamil.com
        080-3013-0924
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maruhashi

インド古典舞踊家 丸橋 広実

南インド ケララ州の古典舞踊 モヒニアッタムの舞踊家です。
ヨーガ、ジャイロトニック、ジャイロキネシスのインストラクターでもあります。
美味しいもの、心と体に優しいことが大好きです。

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